第3章:脱藩の志と、シリコンバレーの衝撃 ―― 「自由の最前線」




成田から9時間。



サンフランシスコ空港に降り立った瞬間、突き抜けるような青空と、乾燥した冷ややかな風。

そして世界中から集まった野心が混ざり合った独特の空気が鼻腔を抜けた。


そこは、あの「淀んだ空気の品川駅」とは対極にある、世界の自由なルールが決定される場所だった。


近くのコーヒーショップに入ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。


使い古されたパーカー姿の若者が、ラテを片手にノートパソコンとスマホの二刀流で画面上の数行のコードを眺めている。

オンラインで数億人の行動を操ろうとしている。


隣のテーブルでは、投資家と起業家が「いかにして地球圏の次の10年を支配するか」を、まるでランチの献立を決めるかのように淡々と語り合っている。


彼らは満員電車に揺られることも、藩の顔色を伺うこともない。

ただ「知能」という神刀一本で、地球圏から天文学的な富を引き出していたのだ。



「なるほど、アメリカの大手テクノロジー企業の世界観、視座は地球圏なのか」



私は抹茶ラテをゆっくり口元に寄せながらつぶやいた。




「30代後半、貯金18万。18年も日本で身を粉にして働いて、これか?」




彼らとのあまりの次元の差に、私は足元が崩れ落ちるような感覚を覚えた。




そこで私は、ある「恐ろしい真実」を知る。


日本で月給「18万円」のために命を削っていた私は、実は「最も効率の悪い、古びた思考慣習、社会群集心理」を強制的に使わされていたのだ。


彼らは全世界を瞬時に飛び越えるAIとシステムを操り、縮小する日本という1億人の島国ではなく、90億人と今後ふくれ上がるオンライン人口を狩場にしていた。



「努力の質が違うのではない。見ている『視座』と、使っている『武器』が根本から違っていただけなんだ」。



シリコンバレーの冷徹な熱狂の中で、私の魂が過去の恐怖と未来の全世界へ飛躍すると精神が覚醒した。




「私も、あちら側へ行きたい。いや、あちら側の世界観や視座を会得しなければならない」




もはや、あの「牢獄」へ戻るという選択肢は消え去った。



私が求めていたのは、わずかな端金ではない。

自分の意志で世界のルールを読み解き、全世界の海をオンラインで自由自在に渡る、圧倒的な「個の自由なる主権」だった。






「しかし、英語も話せず、資金もない。そんな無力な私がどうやってこの『知能の戦場』で生き残るのか? そこで出会ったのが、後に私の『神刀』となる、黒船を操るための技術だったのです」




→ [第4章:士魂商才――黒船(AI)を操る抜刀術] へ続く